今月15日に予定されているハードフォークで、ビットコインキャッシュのプライバシー保護機能や拡張性の向上が期待されている「シュノア署名」が、ビットコインに先駆けて実装される。
ブロックサイズを巡る議論で、2017年以来火花を散らしているBTCとBCHコミュニティ。
この話題においては歩み寄りが全く見られない両コミュニティだが、「プライバシーを尊重するべき」という点では意見が合致している。
しかも、これに関しては、ビットコインキャッシュがビットコインの一歩先を踏み出そうとしてるようだ。
BCHネットワークの拡張性や匿名性を向上させる「シュノア署名」が実装されるビットコインキャッシュのハードフォークが5月15日に行われる。
ビットコインキャッシュに匿名性機能が加わる
ビットコイン同様、ビットコインキャッシュを送金する際には秘密鍵で「署名」する必要があり、 現時点は「ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)」という署名方式が採用されている。
今回ビットコインキャッシュがハードフォークを実施して実装する「シュノア署名」は、このECDSAを改良したもので、データ量削減によりBCHネットワークの拡張性を向上できるという。
また、シュノア署名はマルチシグ取引を行う複数の署名者が、それぞれの公開鍵をグループを代表する集約鍵にまとめることができるため、取引を行う人物の特定を困難にすることが可能。
すなわち、ビットコインキャッシュに匿名性を持たせることが可能というわけだ。
もちろんマルチシグ自体が画期的なアイデアだとは言い難い。
が、従来のECDSAではスマートコントラクトを介してマルチシグを実装しなければならなかった。
また、ECDSAをアップデートするようなシュノア署名は集約鍵を使用する取引と通常の取引を区別できなくするなどプライバシー保護において様々なメリットをもたらすことが期待されている。
いつかビットコインにも匿名性機能が加わる…かも
BCHがBTCよりも先にシュノア署名実装まで事を運んでいることに対して、イーサリアム共同創設者を含める一部の業界人は驚いている。
それというのも、そもそもシュノア署名は拡張性問題の解決策としてBTC開発企業Blockstreamの共同創設者であるピーター・ウィレ氏によって提案されたものだ。
BTCに匿名機能が実装されるかどうかは定まっていないが、技術的な進捗はビットコインコミュニティで見られる。
例えば、ウィレ氏は、「MAST(マークル化抽象構文木)」とシュノア署名の利点を織り交ぜたような「Taproot(タップルート)」という新たな署名方法に関する2つの提案を本日発表した。

出典:[bitcoin-dev] Taproot proposal
また、これらは技術的に割かしシンプルなハードフォークではなく、後方互換性のある「ソフトフォーク」によるアップデートが予定されているという。
昨年コインチェック取引所が匿名通貨の上場廃止を決行したが、仮想通貨のプライバシー機能を巡る議論は今後どのように発展するのだろうか。
コミュニティ内でのディベートだけではなく、取引所や仮想通貨規制との兼ね合いにも注目していきたいところだ。